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「……
その話を信じるとして、どうしてこの学校が私の願いを叶えてくれるの?」
「それは、アナタが誰よりも虎青高校を愛しているから」
美奈穂の言葉は私の虚を突いた。
「アナタは皆が楽しい学園生活を送れるように、日々、気を配り続けた。
誰もが学校を好きになるよう、努力を惜しまなかった。
そんなアナタを、虎青高校はきちんと見ていた。
そして、アナタの努力を受け入れたの。
例え、動機が暗い家庭環境に起因するのだとしても……学校を唯一の居場所とし、アナタの抱いた情熱と想いは、本物だと認められたのよ」
……不意に視界が歪む。
気付けば、私の眼からボロボロと涙が零れていた。
「茜さん……」
笹鳴さんが心配そうに声を掛けてくれるが、私は左手を前に突き出して問題ないと意思表示する。
「別に悲しいから泣いているわけじゃないの。
私……嬉しくて……」
私は自分の居場所を失わないために、可能な限り手を尽くした。
クラスメイトの面倒を見るのは当然のことで、教師の手伝いも掃除も何だって、人一倍頑張ったつもりだ。
青春時代の貴重な時間を虎青高校に捧げた、なんておこがましい事は言わない。全ては最上の学園生活を送るためだったから。
だから、努力が認められたい、なんて少しも思っていなかった。
誰からも評価されなくてもいいと思っていた。
……けれど、私を見てくれていた存在がいたのだ。それも、他ならぬ虎青高校が。
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