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夕陽は沈みかけ、空は淡く燃えていた。
時刻はもう七時近い。学校に残っていたら、注意を受ける時間帯だ。
「あの、茜さん、そろそろ……」
ひとしきり涙を流し、すっきりした私に、笹鳴さんは相変わらず遠慮がちに声を掛けてくる。
そろそろ、お別れの時間と言いたいのだろう。
校舎の中は、もう九割九分浸水している。完全に校舎が沈み真っ赤に染まった時、全てが終わるのだと私は悟っていた。
「この後、私はどうなるの?」
別に自分の心配などしていないけれど、何となく聞いてみた。
「アナタのいた世界……日常に戻る」
「美奈穂と笹鳴さんは?」
口に出してから、自分自身を責める。
そんなこと分かり切ったことじゃないか。
二人とも既に死んだ身だ。
全てが終わり元に戻った時、すなわち彼女達も元の死人に戻る。
しかし、私の失言に対し、二人が見せたのは微笑みだった。
「私は……ここでずっと美奈お姉ちゃんと一緒に居ます」
何を思ったのか、笹鳴さんは急にベランダの塀の上に上り始めた。
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