第十章:真実の落花

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私は歯を食いしばり、ぐっと堪えた。 私に、彼女の死を悼む権利などありはしないから。 残された美奈穂とのお別れも、もうすぐのようだ。 彼女は私の目の前まで歩み寄り、そして頭を下げてくる。 「アナタには感謝している」 「やめてよ。私が起こしたのはただの悲劇よ。貴女が大切に思っていた笹鳴さんまで死なせてしまって……」 「それについては、もう、終わったことよ……」 ……そうね。これ以上、意味もなく美奈穂に悲しい声を出させたくはない。 「けれど、感謝というのは本当よ。 ワタシの心残りだった『これ』を、取り戻すことが出来たのだから」 そう言って、彼女は差し出した手を広げた。 手の平の上には、かつて真那智先輩の首に掛かっていた紫の花をモチーフにしたペンダントがあった。いや、鎖は取り外され、今はブローチというべきか。 そうか。真那智先輩から奪われていたと思ったけれど、本来の持ち主の元に還ったのか。 「これで、やっとワタシは逝ける」 「そう……、これで本当にお別れなのね」 もう、彼女の『また会える』という言葉は聞けない。 その代わりに、美奈穂は柔らかい抱擁で私を包み込んだ。 やっぱり……温かいわね。
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