第終章:夢幻の衆人

2/3
33人が本棚に入れています
本棚に追加
/260ページ
瞼が重い。 目を開けるのが酷く億劫だった。 でも、体の節々が痛むし、何だか肌に当たる冷たくて堅い感触が気持ち悪いし…… 仕方ないか、と面倒臭い気持ちを抑え、ゆっくりと目を開ける。 「あ、あれ? なんで私、こんな所に?」 何故か私は虎青高校の校庭に寝転がっていた。 道理で寝心地が悪いはずよ。コンクリートの地面で休めるわけがない。 「というか私……今まで何していたっけ?」 夕焼けの空は既に時刻が七時近いことを語っている。 私が学校に忘れ物を取りに来たのは正午過ぎ。そこから、自分が何をしていたのか、全く思い出せなかった。 気付くと、忘れ物のノートを手に持っていた。でも、なんで鞄も何も持ってきていないのよ、私。ノートを裸で持ち歩くのって、ちょっと恥ずかしいのだけど。 そこはかとなく気味が悪くなり、両方の上腕を擦る。 「はぁ……」 記憶障害なんて経験したことがなく、ちょっと自分の健康状態が不安になった。 何より、時間を無駄にしてしまったことが痛い。 せっかくの夏休みの初日だというのに、もう家に帰らなければいけないのか…… あの家は私にとってただの牢獄だ。そして、あの家にとって私はただの囚人でしかない。 そりゃ溜息だって吐きたくなるわよ。
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!