第終章:夢幻の衆人

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まあ、そうは言ってもずっと学校の敷地にいるわけにはいかないしね。 私は立ち上がり、体に付いたゴミを払った。 少し砂がついていただけなので、すぐに綺麗になる。 覚悟を決めて、帰路につくことにした。 数歩だけ進んで、ふと振り返る。 聳え立つ虎青高校の校舎。 ……私はここで。 …… 思考が上手く組み立てられなかった。 「ふぅ……、本当に調子が悪いみたいね」 考えるのを止め、今度こそ私は振り返らずに校門を潜った。 校舎に対して、少し名残惜しさを感じたのは、何故だろう。 学校には夏休み中とはいえ、いつだって来られるのに。 だけど、微かな疑問も長くは続かなかった。 学校から離れるほど、家に近づくほどに、私の気分は暗澹とし落ちていったから。 それでも私は歩く。 明日があるから。 また学校に行けるから。 夕焼けで茜色に染まる校舎を背に、 私は歩く。 【完】
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