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さて、挨拶も済んだことだしさっさと退出だ。
しかし、万事が上手くいくことはない。出口に向かう私の耳に、生徒会長の頭を悩ませる一言が届く。
「睦美、七塚君、彼女を送って差し上げて」
えっ? と、思わず振り返ってしまう。
不思議なことに、今まで生徒会室の調度品と化していた男女二人が動き出したのだ。
命令を下された二人は生返事で了承の意を示す。今を以て、彼等は私の監視者となったわけか。
やれやれ。さすがは性悪生徒会長様ね、ぬかりがない。
いっそ感心した私は、二人の男女のエスコートを受け入れた。
さて、荷物が増えたけれど今度こそ本当に退出よ。
生徒会室を出て扉を閉める時、私は異な事を見咎めた。
それは、柳瀬先輩とともにやってきたにも関わらず誰からも触れられなかった、埒、という人のことではない。
私のクラスメイトにして、極限まで存在感を薄めていた笹鳴初嘉のことだ。
彼女は両手を胸の前に持ち上げ不安な様子。にも関わらず、私の目を真っ直ぐに見据えていた。
彼女の唇が動く。
『お・め・ん・あ・あ・い』
……ごめんなさい?
ドウシテアヤマルノ
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