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問題なのは、もう一方。白藤先輩だ。
彼女は話し掛けてくる素振りもないのに私をちらちらと振り返り、せせら笑っている。
私としては特に気にする程ではない仕草だったけれど、相方の方が嫌気が差したようで、
「やめろ、やめろ。ホントお前、気持ち悪ぃな」
不快感を隠そうともしない。
「送る以外でどうこうしろ、なんて言われてねぇだろ。下手に手を出したら後でお嬢にどやされちまうぞ」
何やら冷や汗を掻きそうなことを口走っているけれど、ここは聞かなかったことにしよう。
間違いなく聞こえているはずの白藤先輩は、七塚先輩をチラ見しただけで無視を決め込んでいる。
盛大な舌打ちをしてから、彼は私に目を向けた。
「にしてもお前、うまいこと逃げたよな。あのまま柳瀬の野郎と喋っていたら無事じゃあ済まなかったぜ」
「はぁ……」
よく分からない、という体を装って曖昧な返事をする。
本当は少々焦り気味。分かっていたことだが、改めて人から言われると、いかに自分が薄氷の上に乗っていたかを思い知らされる。
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