第一章:虚構の番人

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……………… 先生の怪談が終わると同時に、教室内に張り詰めていた緊張が解ける。 「ふう……」 私、茜 香子(あかね かおるこ)にとっても緊張していたのは同じ。思わず安堵の息を吐いてしまう。 クラスメイトの反応はまちまちだった。怖くて身を震わせる者、純粋に怪談を楽しむ者、何故こんな話をするのかと憤る者、中には寝ている者もいるけれど。 「つまりだ。深夜まで遊ばない。危ないところには行かない。先生はそう言いたいわけだ!!」 先生が怪談を教訓としてまとめる。 このクラス担任の悪い癖として、急に怪談を始めることがあげられる。注意事項は普通に伝えて欲しい。 「さあ!! 先生からはこれだけだ。夏休みだからって羽目を外し過ぎるなよ。茜、号令を頼む」 号令はクラス委員である私の仕事。 「起立!!」 全員が勢いよく立ち上がる。普段より反応が早いのは、早く帰りたいからだろう。 「礼!!」 ここ、私立虎青高校は明日から夏休みが始まる。私にとっては必要のない夏休みを、自身の号令で始めてしまった。 イヤヨ…イヤ
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