33人が本棚に入れています
本棚に追加
放課後、部活動に入っていない私は、すぐに帰路についていた。
校舎を背に、駅への道を歩く。
夏の真っ只中ということもあり、辺りはまだ明るく、まとわり付く暑さも健在だ。
早めの帰宅は望まないが、この気温の中、外で時間を潰すのは得策ではない。
ではどうするのか考えていた時、背後から近づいてくる気配を感じた。
「茜さん。茜さんもお帰りですか?」
振り返り、声の主を見つめる。
童顔で目がまん丸く、とても愛嬌のある少女。
小柄な体つきのこともあり、子猫を思わせる。
声を掛けてきたのは、クラスメイトの笹鳴 初嘉(ささなき ういか)だった。
「そうよ。今から駅へ向かうところなの」
「そうなんですか……」
笹鳴さんは俯き、言葉を濁した。
言いたいことはあるが口に出すのは苦手。それが、おとなしい笹鳴さんの性分であることはそれとなく承知している。
だから、私が口火を切った方が話は早い。
「良かったら一緒に帰らない。笹鳴さんも電車通学よね?」
笹鳴さんの考えを予想した台詞だったが、彼女の嬉しそうな表情を見る限り正解だったようだ。
「はい。電車は別方向だけど、駅まではご一緒できます!」
最初のコメントを投稿しよう!