第一章:虚構の番人

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私達は肩を並べて歩き出した。女子高校生としては平均的な身長の私よりも、笹鳴さんは一回り小さいので、歩調も彼女に合わせる。 話題の提供は主に私からだ。 「笹鳴さん、今日は部活はないのかしら?」 「部活じゃなくて同好会ですよ。料理同好会は先週から活動してません。あと、夏休み中にも活動はないみたいです」 そうなんだ、と笑顔で返す。 私は、軽そうな鞄を両手で持つ彼女を横目に、改めて思うことがある。 この子はクラスの中でも特に私に懐いている。 確かに彼女とは友人という間柄だが、何も特別なものではない。 男女問わずに交友関係が多い私は、クラスの大半、もっと言えば、学年の多くが友人と言える。 いずれも平等に接しているため、格別に仲の良い人はいない、と考えていたのだけれどね。 「茜さんは部活動には入っていないのですよね?」 私はどの部活にも所属していない。広範囲に平等な交友を良しとする私にとって、何かの縛りを受けたくなかった。 「ええ、そうよ。でも、運動が苦手とかではないのよ」 答えながら、前にも彼女と所属する部活の話をしたことを思い出す。 以前にも帰りを共にしたことがあって、その時の会話でも今のように部と同好会の違いを指摘された。 内心で自分自身を責めて、反省する。同じ話題を振るなんて、相手に失礼だった。
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