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笹鳴さんに関心がないわけではないが、大勢の人と話していると、どうしても個々の情報が希薄になる。
さして気にしていないのは、彼女の薄く微笑む顔から読み取れる。
けれど、注意しなければと気を引き締めた。
「先生の怪談はどうだった。それなりに面白かったと思うけど」
ホットな話題ならば、話が被ることがないと思ったけれど、思いの他、笹鳴さんの反応が大きかった。
元より縮んでいる身を更に縮ませて、肩を強張らせている。
血の気が失せたように顔面蒼白になっているけど……どうして?
「あのあの、その話は……その……」
目を伏せて、話すことを拒む。
なるほど、彼女は怖いと感じた派なのか。
「ごめんなさい……」
消え入りそうな声で謝罪する彼女に、私は苦笑したい気分になった。
彼女は何をそんなに怯えているのだろう。
話の腰を折ったくらいで、私に嫌われているとでも思っているのかしら。
「何も夏休みの前日に怖い話をしなくてもいいのにね」
さり気なく話を終わりに持っていく。笑顔を作り、彼女を安心させるのも忘れない。
笹鳴さんは申し訳なさそうにしたが、私の意を汲み、気を取り直すかのように小さく深呼吸をした。
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