第一章:虚構の番人

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笹鳴さんに関心がないわけではないが、大勢の人と話していると、どうしても個々の情報が希薄になる。 さして気にしていないのは、彼女の薄く微笑む顔から読み取れる。 けれど、注意しなければと気を引き締めた。 「先生の怪談はどうだった。それなりに面白かったと思うけど」 ホットな話題ならば、話が被ることがないと思ったけれど、思いの他、笹鳴さんの反応が大きかった。 元より縮んでいる身を更に縮ませて、肩を強張らせている。 血の気が失せたように顔面蒼白になっているけど……どうして? 「あのあの、その話は……その……」 目を伏せて、話すことを拒む。 なるほど、彼女は怖いと感じた派なのか。 「ごめんなさい……」 消え入りそうな声で謝罪する彼女に、私は苦笑したい気分になった。 彼女は何をそんなに怯えているのだろう。 話の腰を折ったくらいで、私に嫌われているとでも思っているのかしら。 「何も夏休みの前日に怖い話をしなくてもいいのにね」 さり気なく話を終わりに持っていく。笑顔を作り、彼女を安心させるのも忘れない。 笹鳴さんは申し訳なさそうにしたが、私の意を汲み、気を取り直すかのように小さく深呼吸をした。
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