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…………ホントにどこから見てるんだろうな。つーか、律儀に俺の質問に答えてくれるこいつは、別に悪いやつでは無いみたいだな。
「まぁ文字についてはスルーしよう。ところで、なんで俺はこんなところにいるんだ?それに今まで何してたのかもわかんねーし………」
今まで何してたのかわからないってのは言葉の通りだ。今までどう過ごしてたのか、両親は誰か、兄弟や姉妹はいたのか、友達関係、周りの環境……何一つ覚えていないんだ。言葉とか文字とかの常識的なことは覚えてるのにな……。
「『いやー、私のかわりにダンジョンの作成をしてもらおうと思ってね。記憶も私が消去させてもらった。ごめんね(笑)』…………は?どういうことだよ?」
紙に浮かび上がった文字を読み上げた俺は、理解できずに聞き直す。その言葉に答えるように、また同じ文章が浮き上がる。
『いやー、私のかわりにダンジョンの作成をしてもらおうと思ってね。記憶も私が消去させてもらった。ごめんねヘ(≧▽≦ヘ)♪』
もう一度浮かび上がった文字と、最後の(笑)が顔文字に変わっていた文章。別に悪いやつじゃないって言葉は撤回しよう。こいつは…………
「俺が聞きてぇのはそういうことじゃねぇんだよッ!!それにごめんねヘ(≧▽≦ヘ)♪ってなんだ!!!喧嘩売ってんのかこの野郎!!」
こいつは人を怒らせるのが上手いくそ野郎だったぜ。今俺の中のブラックリストにこいつが書き込まれた。
「記憶を消したってなんだよ!?それにダンジョン作成!?ふざけんな!!」
天井の方を向いて叫ぶ俺。それに対してダンジョンマスターとやらは無言。人を馬鹿にして次は無視か?この野郎……!
「…………あ、紙に文字が浮かび上がるんだった」
無視じゃなくただ俺が紙見てないだけだった。今の俺ただのバカじゃん……恥ずかし。
『私に向かって叫んだつもりだろうけど、そっちに私はいないよ?恥ずかし(笑)』
その言葉を見た俺は、黙って紙を破り捨てた。
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