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「ましろ、ありがとう。でも、それは出来ないと思う。わたしは、ましろとは違う」
「……そっか。でもさ、君と俺、どこが違うのかな。どこも違いなんてないと思うよ?」
真白は子供のその言葉を予期していた。
子供のこれまでを考えれば、素直に頷くとは思っていなかったのだ。
「違うよ、わたしは神様って存在。ましろは、人間って存在。相容れない存在なんだよ」
子供はその幼さに似合わない言葉遣いをするが、同時に真白に助けを求めているようにも窺えた。
「なるほどね。でも、それこそ間違ってるなぁ。君はもう、神様じゃないんだから。神域も離れられたろう?」
「うん、あそこからは出られたよ。でも、出られたからって神様の存在じゃなくなるわけじゃない。その存在は生きている限り、永久に変わらないの」
子供は真白の問い掛けに頷きはするものの、自身の存在についての主張を曲げることはなかった。
「縛られる事はない。って言ってもまだ出たばかりで難しいか。ならさ、新しく生きてみようよ」
子供の言葉に、真白は少し違う方向から諭すことにした。
「新しく?」
「そう、新しく。新しい名前で、新しい生活して、新しい人生を歩もう? そもそもさ、生きるって言うのは毎日が新しい事なんだ。過去に縛られていても、そんなことは関係ない。君は君なんだから」
子供が何度目かになる首を傾げる仕草に、真白は頷き話していく。
内容など無茶苦茶だ。
だが、真白はそれで構わなかった。
今必要なのは、子供が自身の存在について苦悩をしない、それだけなのだから。
「ましろ……、ありがとう」
子供にも真白の意図が分かったようだった。
理解したのだ、その幼い身で。
子供はお礼の一言の後、可笑しそうにクスクスと無邪気に笑っていた。
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