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「冗談だろ? この世界に何でこんな奴らがいるんだよ」
真白は思わず、顔を引きつらせてしまう。
「真白、あれはこの世界の理を逸脱した存在だよ。在ってはならないモノたち」
それに答えたのは、つい先ほど真白に漢字で名前を地面に書いてもらい覚えた初音。
こちらも真白と同じく、顔を引きつらせている。
「それって、ヤバいよね」
「うん、世界の理ってかなり許容量があって、わたしたちみたいな存在でも世界の理の許容範囲内なんだけど……」
「こいつらは、それすら逸脱してるってことか。初音、俺が戦ったとして倒せるかな」
初音が口を噤むのを見て、真白はその先を自ら言うことにした。
それと同時に、一つの不安をも言葉にしてしまう。
「全快の状態の真白なら、手こずらないと思う。でも、今の真白は精神も肉体もボロボロ。倒せるけど、逃げることも視野に入れた方が良いと思うよ」
それに対して、初音の回答はあまり良いとは言えない内容ではあったが客観的でもあった。
「逃げられるなら、逃げるんだけどね。あれは、逃がしてはくれないようだよ」
すぐ近くに迫り来るその逸脱した存在と、初音の回答によって溜め息を吐きたい心境の真白は、辺りを見渡しそのまま肩を竦めた。
「ごめんね、真白。わたしのせいで」
真白が今戦えるような状態じゃないことを、初音は一番理解していた。
そのような状態に追い込んだのは、他ならぬ初音自身なのだから。
罪悪感に苛まれ、初音は真白にしがみつき謝る。
「気にしない気にしない。初音を救えたんだ。俺の身体くらい、代償としては安い物だよ」
対して、真白はその事をまるで気にしていなかった。
そんな事は当然だろう、と言わんばかりに救ったことを後悔していなかったのだ。
しかし、現状は厳しいの一言。
真白も、軋みをあげている己では初音を庇い戦うのは無理があると自覚している。
それでも、何か手を打たなければならない。
真白は、もう一度辺りを見据え、息を吐き出す。
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