二話 思わぬ遭遇

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 辺りには逸脱した存在、姿は犬か狼を歪に模倣したような形、それに加え背から触手のようなものまで蠢かせている。  そして何より、大きかった。  大型の犬や狼より、なお大きい。  二倍、いや、三倍はあるだろうか。  それが数匹、今にも襲わんと涎を垂らし唸り声を上げ真白達を取り囲んでいた。  真白達は何故、このような状況に追い込まれてしまったのか。  それは遡ること数十分前のことだ。  真白が初音に漢字を教え終わった頃だった。 「真白、真白。これからどうするの?」  初音が真白に現実的な問題を思い出させる。 「ん? そうだね、どうしよう。先ずは、上からこの辺りを見渡してみようかな。それから人が居そうな場所か、人が居た痕跡でも探してみるつもりだよ」  初音の言葉に真白は気楽に答えていた。  真白は初音とのやり取りで気持ちを落ち着かせることが出来た為、現状を若干楽観的に考えられるようになったようだ。 「でも、こんな所に人なんか居るの?」 「まぁ、そうだね。でも、この場所がこんな状態になったからと言って、全ての人が存在しないとは限らないよ。何処かに逞しく生きてるかもしれないし、此処だけがこんな状態になったのかもしれないからね」  更に続く初音の問い掛けに、真白はまだ希望は捨てていないと語る。  初音を迎え入れようとした世界が、既に終わってしまっているなど考えたくなかったとも言えた。 「うーん、そっか。あ、なら、わたしが世界を覗いてあげる! ちょっと待っててね」  そこに初音が名案を思い付いたとばかりに手を叩き、何もない空間に手を翳す。  次いで、すぐにトランス状態のようなものになり、虚空を虚ろなその瞳で見据える。 「え、初音。それは……」  あまりの早さに真白は止める暇もなく、ただただ見ていることしか出来なかった。 「――――。――――……、真白、この世界、痛いっ」  初音が意識を取り戻し、真白に声を掛けたその瞬間、初音は頭に真白の拳骨を頂いた。
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