二話 思わぬ遭遇

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 その音に身体が震える初音だったが、幼い身で気丈にも真白との会話を続ける。 「ううん、気にしないで真白。私にも今の真白の状態は分かるから。不安定なのは仕方ないよ」 「ありがとう、初音」  真白は自身よりも幼い初音に気遣われ、恥ずかしいととも情けなかった。  礼を言った真白は初音を抱き直すと、ここから先はもう情けない姿は見せないと改めて己に誓う。 「とにかく、此処から離れた方が良いみたいだね。初音、少し揺れるよ」  真白は初音に注意を促すや否や、トンっと軽やかに地面を蹴ると初速から今出せる最速に入り、瓦礫の町を駆け抜けていく。  向かう先は、瓦礫と化した場所から少し離れた場所に位置する倒壊を免れた五階建てビル。  真白はそこの屋上へと向かっていた。  しかし、真白がそこに到達する前に、それは現れた。  待ち伏せをされていたのか、はたまた縄張りだっただけなのか、真白達は唸り声と共に囲まれてしまった。  予期しない出来事に、仕方なしに真白は初音を下ろし庇うように立つ。  目や仕草で牽制を行い、これ以上それを近付かせないように努めていた。  そして、時は過ぎ冒頭へ。
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