3人が本棚に入れています
本棚に追加
「はぁ~~~い。
そーこーの美っ人な、おっ兄さんっ。
お茶っ、しませんかぁ?」
初対面の人間にまるで歌ってるかのようにこんなこと言われてホイホイ付いていく奴がいたら、脳みその安全装置が壊れてるって思わないか?
だからオレは当然無視をした。
「あーーっ!
おすまししちゃってー。
恥ずかしがり屋さん、なのかなぁ?」
なのにそんな俺の反応にまったく頓着せずそんなことを言いながら近寄って来て、強引に顔をのぞきこもうとするアブナそうな女からオレは顔をそむけた。
「照れてるー。
かっわいー。」
ふつうは避けられてると思わないか?
フ・ツ・ウ・はっ!
「でもね?
恥ずかしがり屋さんでも、ちょっとは他人とお話できるように慣れとかないと、ドージンの救世主にはなれないよ?」
少しだけ真面目なトーンの声でそう言われ、オレは驚いてうっかりとそいつを見てしまった。
目を合わせたそいつは、にっこりと笑って言った。
「佐伯、章良くん?
だよねぇ?
んっとお、はじめましてじゃないんだよ。
だからぁ2度目ましてぇー。
これからぁ、忙しくなると思うんだけどもぉ、よろしくね?
あっくん?」
カエルを見つけたヘビはきっとこんな風に笑うに違いないって感じの笑顔で笑ってるそいつを見てしまった瞬間。
オレは絶句した。
そして、あっくんって誰のことだよ、とかなんで忙しくなるって決めてんだよとかそもそも、おまえは誰なんだ、とか。
心の中で瞬時に湧いたそんな疑問をたったひとつも口に出来ないままで情けなくもフリーズしてしまった。
そしてそれが、しいの奴がオレを酷使しまくる日々。
その始まりの鐘の音が、イベント閉会の合図である蛍の光のメロディーとして鳴り響いている。
そんな出会いだった。
最初のコメントを投稿しよう!