これもよくある日常風景

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 しい。  フルネームは、小阪しい(こさか しい)。  財閥系のグループである二階堂グループの一員である運送会社。  そのニコニコ運送の社長令嬢。  の、はずなんだ。  実際に会ったことはないんだが、今の社長は写真と戸籍でみる限り (他人の戸籍謄本を勝手に閲覧するのはあまりよろしくない行為だが、オレにとってはそこまでするほどの疑問だった) 確かにしいの親だし、今の副社長でもうすぐ社長になるのが内定している、しいの兄からも一応は家族だっていう証言だってもらってある。  だが、しい自身からは社長令嬢って感じがカケラほども感じられない。  そうだなあ、しいを一言で言うなら、やり手の起業家って感じが一番近いかもしれない。  ただオレにとってはやり手の女郎屋の女将ってのが正直なとこではあるんだが。  そんなしいの奴は初対面での宣言どおり、オレを大変な目に会わせてくれた。  まず、その頃千葉県沖に建設計画だけが持ち上がっていた大型のゴミ処理施設と埋立地問題に首を突っ込んで、なにをどんな風にどうやったんだかそこの管理権と、一部の土地についての永久使用権をもぎとってきた。  そして自分とこの会社の石油運搬船が折からのエネルギークライシス (石油の産出量が突然に減ってしまって、全面的に輸出がストップした事件を発端とした世界的恐慌の事だ) のあおりを受けて使われなくなり、余っていたのを改造して移動型カプセルホテルといわれるような超大型客船を作った。 そうして島の方にはサファリパークがすっぽり入るんじゃないかと言われるぐらいのばっかでかい平屋建てのイベントスペースをぶち建てやがった。  場所と交通手段。  そしてうるさい世間の目が無い好き勝手にお祭りのできるスペース。 それらの武器を手に入れて。 しいの奴はルナティック・フェスティバル(普段俺たちは通称のル・フェスで呼ぶ事の方が多い)を立ち上げやがった。
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