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ゴメンゴメン、と謝っているが、多分またなにかあったら繰り返すんだろうな、なんて俺の中では既に諦めつつある。
かれこれ十数年の付き合いだ。流石に色々慣れてきた。それと、この後続くであろう面倒事にも。
「おっす、健吾、間宮さん、また何か有ったのか?」
「何も」
「何もって、健吾。間宮さんがお前の傍にいて、熱弁してたって事は、また何か情報貰ってたんだろ?」
「ちっ」
「あっ、てめっ、舌打ちは無いだろ舌打ちは!」
――間宮睦月は情報通。
文化祭のゲスト、転校生の情報、授業の時間割の変更、テストのヤマ等々、学校行事に関して、睦月の知らない情報は無い。
これはクラス中では周知の事実で、俺に話してくるのは生徒個人の物ではなく、学校生活において、プラスになる噂ばかりと言うのも、よく知られていた。
と、言うよりか、テンションが上がった睦月の声が大きくて、回りに聞こえてるって感じだけどな。
しかも、厳選されているのか、情報に間違いが無いのも大きいのだろう。
『俺の傍で睦月がテンション高く話している』と言う条件が揃うと、大体わらわら寄ってくるんだよな。
「間宮さん、今回何がわかったんだ?」
「き、木下君。えっとー」
「……ん? 睦月?」
珍しい。睦月が言い淀むなんて。
何時もなら楽しそうに話すのに。学校行事じゃないから、とかか?
待つこと数秒。ゴメン、ちょっとトイレに、と言って席を立つ睦月。どうしたんだ? 本当に。
「なぁ、健吾。お前、間宮さんになんかしたのか?」
「いや、お前が来るまでは何時もの睦月だったけどな」
これは本当の事だ。さっきまではいつも通りだった気がするんだが。
んー、深く詮索するのは止めておくか。どうせ分からないし。取り敢えず目の前に居る、悪友の性にしておこう。
「なぁ健吾。俺が悪いのかな?」
「あぁ」
「マジかー! って、マジで?」
「あぁ。俺の中ではそう結論付ける事にした」
「じゃあ、違うな。で、今回はどんな噂だ? 俺達の卒業式で何かあるのか?」
俺の結論ってだけで違うと判断されるのも如何なものだろうか、教えてやらないぞ? 本当に。
勝手に犯人と決めつけさせて貰った目の前の悪友。木下君こと弥生は、先程の睦月と同じ様に、俺の前に有る自分の席へと着席する。
しかも、既に何かを教えてもらえると、信じて疑わないのだろう。ニコニコしながら振り返ってきた。
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