間宮睦月は情報通

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 今まで、睦月の言葉が間違っていた事はない。これは分かってるんだが……今回はちと違う。  噂話の中でも、実際に起こる事と言うよりは、空想や妄想。怪談のような話に近いんだよな。まぁ、これも噂話にはなるんだろうけど。 「今回のは実用性無しだ。ただの噂話だぞ?」  睦月が話さなかったのは、単に、これが間違いだったとき、文句を言われるからだろうか? 俺も学校行事以外の噂を聞かされるのは正直初めてだから、なんとも言えないが。 「それでも良い! 健吾が使えなくても、俺には使えたりするかも知れないだろ?」 「弥生……本当はただの野次馬根性みたいなものじゃないのか?」  図星だったのか、一瞬顔をひきつらせる弥生。だが、それでもめげずにペタンと額を机に擦り付けた。 「……なんの真似だ?」 「土下座だ」 「お前の土下座、軽いのな」 「ああ! 受験勉強の暇潰しになら命懸けれるね、俺」 「いや、普通に勉強しろよ。今週なんだろ?」  高校の三年生。それと、切っても切れない縁である受験戦争。うちの学校も、残念ながら、その例に漏れる事なく、戦争の真っ只中だ。  一応進学校と呼ばれるだけあって、大体が大学に受かったみたいなんだが、目の前のこいつは、未だに進路を決められずにいた。 「ちぇっ、決まってるやつはこれだから」 「関係ないだろ。本当に細やかな噂なんだ」 「なら、それこそ聞かせてくれても良いだろ? 勉強止めるぞ!」 「それ脅しになってないだろ……使えなくても文句言うなよ?」  一応教えてやるか。  噂の事を話した後の反応を考えると、本当に怠い。面倒くさい――が、こいつを不機嫌にするのは、それ以上に精神衛生上宜しくない。  席が目の前ってのも有るが、何だかんだで三年間一緒だった奴だ。この事で集中出来なくて浪人ってのも、夢見が悪くなりそうで恐い。  心に決めて一秒、羞恥心で更に一秒貯めて、俺は口火を切った。 「男が桜祭に誘って出来たカップルは、終生上手くいくらしいぞ」 「は?」  やめてくれっ、その何言ってるの? って顔。だから言いたくなかったんだ。  思わず恥ずかしくなって頭を抱える。分かった。これが恥ずかしくて逃げたんだな、睦月。  どうせこいつの事だ。笑うか、呆れるかのどちらかだろう。  そう、俺は予想を立てたんだが……良い意味で、それは裏切られる事になった。
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