143人が本棚に入れています
本棚に追加
春、桜が咲き乱れる京都嵐山。
そこに、彼はいた。
「はぁ、花見酒もなかなか乙だな…。」
「蒼空さん、また来とるんですね。」
「あ、咲さん。昨日ぶりですね。」
「もう、昼間からお酒なんか飲んで…。そんなんで刀振れるん?」
「あはは、女子に刀の心配をされるとは…。なかなか面白いものですね。」
少年は笑って、また酒を煽る。
歳は15くらいだろうか。
まだ幼さの残る顔は中性的で整っており、笑うと三日月の様に曲線を描く瞳は優しく眼前の少女を見つめる。
そんな少年の視線に、少女は頬を染めた。
「心配したくもなるでしょう。いくら蒼空さんが酒豪でも、酔った人に刀振り回されたら怖いし。」
少年はそんな少女に気付きもせずに、たしかにその通りだと笑う。
この少年は、名を雨晴蒼空(アマハラソラ)といい、細身の身体には見合わぬ立派な大小の刀を腰に差す、侍である。
.
最初のコメントを投稿しよう!