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「…あ、咲さん。花弁が…。」
蒼空は少女の髪についた花弁を摘まみ取り、優しく笑いながら花弁を風に流す。
この少女は、嵐山にある蒼空の行きつけの茶屋の娘である。
明るい髪色に朱の着物がよく似合う、明るい少女。
「お、おおきに。」
「いえいえ」
蒼空は優しく笑いながら、また酒を煽った。
そんな時である。
「きゃあっ」
二人の極近くで、町娘が浪人にぶつかり尻餅をついてしまったのは。
最近では武士という位に生まれなかった侍かぶれの連中が、浪人として京の都にのさばっている。
娘がぶつかったのはどうやら質の悪い浪人であったようで、それに酒が入ってますます扱い難くなった者だった。
「ちょ、蒼空さんあれ…。」
「はは、面倒ですが仕方がない。御免。」
咲が蒼空の肩を叩くと、蒼空は至極面倒そうに立ち上がる。
そして、娘に絡む浪人に向かっていった。
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