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「あの、失礼しても宜しいですか?」
「あぁん?お前ぇ、俺が誰だか分かって話しかけてんのか。」
「いいえ、存じ上げません。私は腕に覚えのある者の顔しか覚えぬ性分ですので。」
「ってめえ…っ、」
蒼空が話しかけた浪人は、いかにもな口調で蒼空を見下す。そんな浪人を、蒼空は終始笑顔で眺めていた。
しかし、そんな浪人が刀を抜いたことで、蒼空の表情は一変する。
「……弱い犬ほどなんとやら…。」
「あぁ?聞こえねーなぁ?言いてえことがあるならはっきり言えよ若ぇの。」
「…弱い犬ほどよく吠えると、そう言ったのだ。」
蒼空は刀を抜き、男に向ける。
その冷たく凍てつく表情に、男は一瞬たじろいだ。
しかし、すぐに刀を構え直す。
「かかって来いや、若ぇの。すぐに刀の錆にしてやろう。」
「……煩い、とっとと終わらせるぞ。」
その言葉と同時に、蒼空は刀を振る。
すると、一瞬にして浪人は倒れた。
あれだけ大口を叩いておいて大した腕でも無かったのを不満に感じたが、蒼空は己の刀を鞘に戻す。
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