あの人と私

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三月も終わりに近づき、だいたいの学校で卒業式が終わったであろう今日この頃。 木々が芽吹き、桜も綻んできた。 肌を刺すように冷たかった風も、今では頬を撫でるように過ぎて行く。 太陽は暖かな温もりを人々に与え、外へと駆り立てる。そんな春の麗らかな昼下がり。 そして私も、例に漏れず陽射しに誘われ外出をする一人である。 この春、高校を卒業し大学生となる私。憧れのキャンパスライフを夢見て、地元を離れ新しい街へと引っ越してきた。 こんなに天気がいいのだから、まだ馴染みのない新居周辺を散策することにした。 そう、それはいつもと変わらない春の一日……のはずだった。 さっきまでは。
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