いただきます

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「…………」 目を覚まし鳴り響くサイレンが、私の耳に残響してうっとうしい。 両手に嵌まった、銀色の手錠もどこか、浮き世離れで実感が湧かない、千切れないかなと思い試しに引っ張ってみたら、案の定、切れなかった。 両脇に座る、刑事さん達はなにやらごにょごにょと話しているけれど、興味ないからガン無視して、パトカーの内部をキョロキョロしてみると、右側に座る、刑事さんと目が合って、ニヘラと笑ったら、露骨に逸らされた。 『歩[アユミ]、僕には人を愛する気持ちがわからないけれど、人形なら好きになれるんだ、ねぇ? 歩、君なら人を愛せるかな?』って言いながら、ラブドールの髪をすいて、その手を愛撫する、お兄ちゃんの姿が脳裏に浮かんで消えた、刑事さんに、連行される私を、茫然自失とした表情なお兄ちゃんの姿、これが数時間前の出来事で、なんだかもう、すべてが終わってしまった気分。 「どうして……」 私は、お兄ちゃんのためにたくさんの『お人形』を持って行ったのに、どうして。 「どうして、お兄ちゃんは、私を愛してくれなかったのかな」 どうでもよくなって、目を閉じた、私はお兄ちゃんが大好きで、愛してたのにな。
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