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病院に行くと、要のお母さんとお父さんがいた
「椿ちゃん…要が…要が…」
お母さんが自分の息子の名前を何度も呼んで泣き崩れた。お父さんが泣き崩れたお母さんを支えていた。
「椿ちゃん…要に会ってやってくれ」
私は静かに頷いて、病室を開けようとした。持ち手を握ったが手が動かない。
このドアの向こうに要がいる。わかっているが願ってしまう…いつもみたいに笑顔で迎えてくれますように…これがすべて夢でありますように…
思いきって開けた。
夕陽が差し掛かるベッド
その上に要がいた。主治医さんがベッドの横にいる。私は要に駆け寄った。
いつも通りの寝顔じゃないか。子供みたいな。でも、寝息が聞こえない。白くて冷たい要。
「要…要!」
私は大声で要を呼んだ。
「椿…うるさいよ…どうしたの?」
そう言っていつもみたいに起きてほしい。でも、ピクリとも動かない。
「結城さん…旦那さまは今日の15時ごろに急変され、17時25分に息を引き取られました」
確かに私のケータイに15時ごろ着信履歴がたくさんあった。
「すみません…今日ケータイ忘れてしまって…」
今日に限ってケータイを忘れてしまった。忘れなければ…あのとき、気づいて取りに帰っていたら…最期に要に会えたのに…自分を責めた。
「結城さん…旦那さまは意識はありました。ずっと、結城さんの名前を何度も呼んでいました」
「要…が?」
主治医さんは「はい」と答えた。
涙が止まらなかった。
私は要の手を強く握るしかなかった
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