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「あ、太一!!」
「よー」
軽く手を上げる太一に、少しときめいた。
気持ちが芽生えはじめたころも感じていたときめき。
自覚するとまた変わるものだなあ。
そう思った。
いかん、こんなことではもたない。
自分も手をあげかえす。
「ごめん、遅れた?」
「ううん、時間通り。こっちこそ急にごめんね」
「いや。ユウからなんて珍しいな」
今まではこんな風に自分から誘って遊ぶことはなかった。
気持ちを実らせるのが困難な以上、大胆になってやる。
「で、どこいく? 俺飯食ったんだよ」
「あ、そうなの? 僕まだだから、ちょっとそこで買って食べていい?」
「ごゆっくりどーぞ」
すぐそこの売店で、パンを買う。
要らないかもしれないと思ったけれど、太一にあげるため、こないだあげたのと同じりんごのジュースも買った。
できるだけ一緒にいたくて、走って戻る。
「おお、はえー。転けるなよ?」
「大丈夫! はい、これ。あげる」
「え、いいの? さんきゅー」
この前と一緒だー、と言いながらキャップをひねる顔に見とれてしまう。
かっこいいな。
「なに? なんかついてる?」
「え、いや! なんもついてない、ない」
「……その帽子、いいな」
「ん?」
「それ」
「あ、うん。ありがとう……」
被ってきて良かった。
お気に入りのキャップ、これからも大事にしよう。
「今日、彼方も一緒にいたんだ」
「え?」
「メールきたとき」
「そうなの?」
「用事があるんだってさ」
そうだったのか。
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