第2章

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「あ、太一!!」 「よー」 軽く手を上げる太一に、少しときめいた。 気持ちが芽生えはじめたころも感じていたときめき。 自覚するとまた変わるものだなあ。 そう思った。 いかん、こんなことではもたない。 自分も手をあげかえす。 「ごめん、遅れた?」 「ううん、時間通り。こっちこそ急にごめんね」 「いや。ユウからなんて珍しいな」 今まではこんな風に自分から誘って遊ぶことはなかった。 気持ちを実らせるのが困難な以上、大胆になってやる。 「で、どこいく? 俺飯食ったんだよ」 「あ、そうなの? 僕まだだから、ちょっとそこで買って食べていい?」 「ごゆっくりどーぞ」 すぐそこの売店で、パンを買う。 要らないかもしれないと思ったけれど、太一にあげるため、こないだあげたのと同じりんごのジュースも買った。 できるだけ一緒にいたくて、走って戻る。 「おお、はえー。転けるなよ?」 「大丈夫! はい、これ。あげる」 「え、いいの? さんきゅー」 この前と一緒だー、と言いながらキャップをひねる顔に見とれてしまう。 かっこいいな。 「なに? なんかついてる?」 「え、いや! なんもついてない、ない」 「……その帽子、いいな」 「ん?」 「それ」 「あ、うん。ありがとう……」 被ってきて良かった。 お気に入りのキャップ、これからも大事にしよう。 「今日、彼方も一緒にいたんだ」 「え?」 「メールきたとき」 「そうなの?」 「用事があるんだってさ」 そうだったのか。
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