第1章

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あまりにも突拍子がなさすぎて、回り回って逆に冷静になる。 「…………いつから」 「中3の後半?」 疑問系で返してきたユウに、対応できなかった。 彼の次の言葉を待っていたのだが、思いのほか気まずいので、言葉を発する。 「恋愛的な意味で?」 「…………多分」 「どこが好きなの?」 「全部かな」 「まじで?」 「やっぱりおかしいかな? 男なのに」 「……別にいいんじゃね。たまたま、男だっただけだろ」 正直に、驚きはすごいのだが、そんなことを言えるわけがない。 沈黙のなか歩いていると、ユウのマンションについた。 「まあ、あれだ。相談してもかまわないです」 「よろしくね」 「応援してる?」 「僕にきかないでよね」 笑いながら手を振るユウの背中を、何も言えないまま見つめた。 高校の入学式に、なんてことをカミングアウトされるんだ。 ひとりで昼御飯の親子丼を作りながら考える。 ユウは急になにを思ったのか。 そこまで考えて、路上のキスを思い出した。 ……本当に、あるんだ。 ああいうのは、はじめてみたのだ。 ユウも恐らくそうだろう。 ユウと太一と一緒にいるのが、なんとなく気まずくなりそうだなと、感じた。
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