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尻餅をついた痛みで表情を歪ませながらも
目線を上へ傾かせると……。
目の前には、あの老人が立っていた。
突然の出来事に彼の顔は
ど肝を抜かれたかの表情を浮かべ震え上がりながらもこう放った。
「お、お、お前は…… いっ、いったい、なんなんだ!」
いくら視界が悪いといえど
月の光が差し込むこの山道では
突然、目の前に誰かが現れるはずもなかった。
「人を化け物扱いしないでおくれ! ほれ、ちゃんと顔も足もあるじゃろ」
老人にそう言われ
始めは心臓が爆発しようなほど
動転していた彼も
次第に落ち着きを見せ
普段の表情を取り戻していった。
(物影にでも隠れて、いきなり飛び出して来たのだろう)
彼は突然目の前に現れた出来事をそう解釈する他なかった。
「取り乱してすいませんでした」
彼はそう言うと立ち上がり、疑問を抱いていた今朝の事について問いただした。
「ところでおじいさんは金欲が見えるだとか、今の生活に満足していないような事を言ってましたよね? どういう事か教えて頂けませんか?」
「よかろう。 わしは研究に研究を重ね、長い年月を経て、ようやく幽体と霊体を具現化する事に成功したのじゃ」
「どういう事か解りやすく説明してくださいよ」
口ではこう言っている彼だが頭の中では
(このじいさん頭大丈夫か? 頭のネジどっか飛んでるんじゃねぇか?)
と老人を馬鹿にしているようだ。
「まぁ待て。 話はおわっとらん。 そう急かすでない。」
おじいさんの話は続いた。
「幽体と霊体を具現化する事で、その幽体と霊体の一部をじゃな、取り除いて相手に渡すことが出来るのじゃ。
つまり、知識や体の一部を相手から貰う事も出来れば、相手に渡す事が出来るという事じゃ。」
「だったら、幽体やら霊体やらを具現化してみろよ。」
この時、彼は眠さなのか、イラ立ちからなのか
タメ口を聞いてしまった。
すると、老人は有無も言わずに、人差し指で何かを書き始めた。
人差し指を追いかけるかのように青く淡い光でなぞられていった。
おじいさんは、まず三角と逆三角を書き
その周りを円で囲みだした。
その形は六芒星(ろくぼうせい)に
円をはめ込んだような形をしている。
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