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その形の前で両手を開き、目を静かに閉じる。
その瞬間「はぁっ!」と力の入った吐息のような言葉を発し、目を見開いた。
(ま、まじかよ)
彼は今起きている出来事に夢を見ているのではないかと思うほど我を疑った。
その反面、夢であって欲しくないとも思っているようだ。
彼はぶっ飛んだ出来事にあこがれを持っていたようなのである。
そうこうしている内に淡く青い光を
放った老人が元居た位置の前に立っていた。
つまり、老人が二人いるのだ。
月の光に照らされ、ようやく見える光を放たない老人も視界に入っている。
「お、おじいさん?」
「どうじゃ? これで信じる気にもなったじゃろ」
「ま、まぁ……」
彼は現実を目の前にしてもなお信じられない様子であった。
老人は茫然としている彼を見ながら
淡く光る自分の身体を指し、その身体について説明をしだした。
「これは霊体と言って霊体は通常死んだ後に使う第2の身体じゃ。 これは、寿命の取引に使うものなのじゃ」
「は、はぁ……」
老人の言葉に彼の頭上には、はてなが広がっていた。
目の前に広がるファンタスティックな光景を
目のあたりにした彼は
興奮して老人の話を知らず知らずの内に
左から右に聞き流し空返事になっていた。
それを見たおじいさんは
自分の霊体と重なり合い淡い光は消えていった。
「明日朝10時にまた此処に来なさい」
そう言い終えると、おじいさんは闇の中に姿を消していった。
俺はそのまま茫然と目を丸くしたまま立ち尽くしてた。
数分後、我に返った彼は大きく頭を振り
グチャグチャの頭を整理しながら帰宅した。
帰宅してからも
ベッドの上で彼はさっきの出来事について考えていた。
しかし、バイトの疲れと
色々有り過ぎた一日にいつしか深い眠りに落ちた。
「いつの間に寝入ってしまったなぁ。 今何時だ?」
ベッドで寝入ってしまった彼は
上半身を起こし、時計を見る。
すると、時計の針は午前九時を指していた。
「もう、こんな時間か」
帰った格好のままだった彼は
歯を磨き、シャワーを浴びていた。
彼はシャンプーで頭を洗いながら
(昨日のあれはなんだったんだ? やっぱり、夢なのか?)
と昨日の事について考え込んでいた。
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