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早朝にかかってきた一本の電話。
逃げた亭主からだったのね。
これがもう、話にならないの。
一方的に出て行ったくせに、帰ってくるなんて。
私は泣いていたんだろうか。
それとも笑っていたのか。
長い電話を終えて、ふと見ると、ユウジは跡形もなく消えていたの。
荷物は少ないヒトだったけど、ここまであっさりとはね。
ごくごく微かに墨の匂いがした気がしてね、私は幾度となく深呼吸した。
今となっては、本当にあったことなのかもわからない。
ユウジの話はこれでおしまい。
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