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パチッと目が覚めた。
時刻は午前2時。
調べでは、この王国のセキュリティが一番緩む時間だ。
事前に用意していた服を亜空間から取りだし、急いで着替える。
これは、貴族用に販売されている物だ。
好みとしてやはり世間でいう上等な物だが、見破られやしないだろう。
最後にお気に入りの装飾品や武具を幾つか手に持ち、亜空間に収納した。
ローブのフードを深く被り、人気の無い周囲を見回す。
人払いの魔術を行使したが、見破られることも無かったようだ。
「行ってきます。」
そう小さく呟き、一度指を鳴らす。
くぱぁ…と音を立てて開いた隙間が更に広がり、人一人通れる大きさになった。
迷わず進めばひんやりとした空気を感じた。
足を止めて、ふりかえる。
音を立ててしまりゆくその隙間から、長年過ごした寝室を見つめ、何故だか少し寂しいような気がした。
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