恋を覚えた1944冬

3/31
前へ
/56ページ
次へ
「姉上~、只今~」 「あ、お帰り」 妹の武蔵が如何やらケーキを買って帰って来たらしい。 「は~あ、道路ぐっちゃぐちゃで大変だ此れ。おまけに車に泥をひっ掛けられるところだった。汚ぇ汚ぇ」 愚痴を言いながら居間に入る扉を開けて武蔵が来る。 「姉上、頼まれたケーキ買ってきましたぞ。いつもの店のいつものショートケーキ」 武蔵はケーキの入った紙箱を私に見せる。 「有難う。此れを食べないと、誕生日が来た気しないわ」 にっこり笑うと 「姉上は此処のケーキ好きですからね。まぁ、私もですが」 二人でハハハと笑った。其処に 「たっだ今ー♪♪」 意気揚々に末っ子信濃の帰宅。 「お姉ちゃん、大鳳ちゃんからプレゼントだって♪」 大鳳とは信濃の親友の女の子だ。裁縫が得意な女の子でよく私の服を作ってくれる。 「これ♪」 信濃から受け取った箱の中には白いワンピースが入っていた。 「あら~、綺麗。早速着替えて来るね」 「了か~い♪」
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加