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「君が、大和だよね?この船の人格、そうでしょう?」
私の艦内のとある士官室にて、最初に彼が私に話しかけた言葉は此れだった。
「…はい」
落ち込み気味だった私は彼の目の前で暗く頷く。
その瞬間だった。私の顔はいきなり彼の胸の中へと入った。抱きしめてくれたのだ。
「思いっきり泣きなさい。私が全て受け止めてあげる」
この言葉に涙が止まらなかった。
国の威信として造られた私。その威信は最高軍事機密として扱われ、私は大東亜戦争に入っても呉で待機の日々を過ごした。
所謂育ちの良い年頃の娘に見られる「箱入り娘」同然。呉に有る私専用の居住の部屋はその象徴だった。入口には何重にも鍵が有り、意味の分からない調度品に囲まれ、畳は年一で取り換えられる。部屋の周りをコンクリートの高い塀で囲まれていた。まるで監獄の様だった。他の仲間の部屋も有るが粗末なものなのに。
ミッドウェーでさえ私は旗艦だったが先輩空母が米軍の攻撃にやられてしまい戦闘の先頭に立つことも無かった。本心は敵の制空権下でも突き進んで仲間の空母たちの一矢を報いたかったが、人格の私のそう言った権限はない。「大佐」という階級は有るがそれはお飾りに過ぎない。
そして愛妹、尊敬していた先輩、出会う事の無かった妹の死。
悔しかった。世界最強の存在として造られたこと自体が逆に活動の幅を狭める仇となっていたことを。
こうして私は暫く彼の胸の中で泣いた。時間なんか覚えてない位。只一つ覚えているのが、窓から見える光がいつの間にか暗くなっていた事だ。
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