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「何…何でそんな怒ってんの?」
「別に怒ってねぇよ。」
「怒ってねぇ奴が俺を担いで無言で歩くか。」
そう。俺は今、何故か怒っている竜樹に肩に担がれている。
何に怒ってんだよ…。
「別に…湊兎が帰ってくるの遅くて心配して授業サボって探し回ってたとかじゃねえし。」
「……くすっ、何だそれ。可愛い奴だなー竜樹クンよ」
「はあ!?んだそれ!もういいから行くぞ。」
少しからかうと面白い反応をする竜樹。これだから竜樹をからかうのはいい。
「……あ、そうだ。竜樹クンよ、俺今日は夜抜けるから…よろしく頼むよ」
「…また言えねえのか?」
「悪いな。言える時が来たら言うよ。」
「…………絶対だぞ。」
そう真っ直ぐ俺を見る竜樹の目が俺を捉えて離さない。
ん……?これは…おいおい竜樹クン…?
ちゆっ
リップ音をたて、俺の唇に重ねてきた竜樹の唇。不思議と嫌な感じはしなかったが…
「…何すんだコラ」
「いてっ!」
なんかムカついたから頭をべしっと叩いた。
「だってよー…秘密はあると寂しい…」
またこいつは…。
「だからって腐男子にキスするなし。」
「愛情表現だ!」
と意味分からん事を言い出す。何が愛情表現だよ。…馬鹿じゃねえの。
俺が八王子湊兎なんて知ったら…しかも、その友達なんて知られたらそれが俺の弱味になる。
そんな事はあってはならない。
悪い…竜樹。
それから俺は授業には出ず、部屋に戻った。何故か竜樹も。元々俺等は成績が良いから単位の心配なんて要らねーけど。
そして夕方6時。
「じゃあ言ってくる。外出届も出してあるから…無駄な詮索すんなよ?」
「わあーったよ…いってらっしゃいハニー」
「行って来ますダーリン」
そんなやり取りをして部屋を出た。そしたら、悠が居てビックリした。
「うわ…悠。どうしたんだよ。」
「……行くの?湊兎…」
心配そうに尋ねる悠に俺は頭を撫でる。この学園で唯一俺の正体を知っている友達だ。
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