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それに、寺鎚のあの目。俺の枷と…弱点となってしまうのなら躊躇せず消すと言ったあの目は本気だった。
あいつは局長としての俺を守るためなら何でもやるだろう。そういう男だ。
昔の俺ならこんな事考えなかっだろうな。それくらい、竜樹や皆が大切に思えてるって事なんだろう。
「……行くか」
それから、大した荷物も無かったが、カバンを片手に持ち部屋を出た。
下で寺鎚が来るのを待っている時。
「おや----」
不意に声を掛けられ振り向くと、あのイカれた家の当主が湊兎に向かってニッコリ笑っていた。
「八王子湊兎様ではありませんか。お久しぶりです。」
「…都岸様。今ご到着ですか?随分と遅くなられたのですね。」
「まあ…仕事が片付かなくてですね。」
どうせ人殺しだろ。何が仕事だ。
都岸の人間が。
「所で、私の息子はある学園に編入したんですが、元気にやってるか心配名んですが……」
「そうですね。都岸様のご子息様なら周りを巻き込む程(やかましくて鬱陶しくて消したいくらい迷惑極まりないが)元気でやっているのではないですか?」
「そうだといいのですが。すみません、八王子様が知りもしない私の息子の話なんてしてしまって。」
知ってるけどな。説明してなかったけど、俺があの学園に通っている事は外には知らされていない。知っているのはごく一部。そんな事知られて人質にとられたりしたら厄介だから、だそうだ。
「にしても…綺麗にお育ちになられましたな。息子が心酔するのも分かります。」
「え…?」
心酔…だって?
「局長!」
「寺鎚…」
「……迎えが来ましたな。では失礼」
そう言って都岸家当主は去って行った。何だ今の言葉。まるで向こうが俺の事知ってる…みたいな言い方じゃないか?
「局長、大丈夫ですか?今の都岸家の当主ですよね?何かされました?」
「………いや、何でもない。行くぞ。」
「…はい」
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