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俺が既に道路上に出てしまっている子猫を回収しようと少し屈んだとき、俺は足がもつれて盛大に前へダイブしてしまった。
「いってぇ……」
顔面をコンクリに擦ってしまった。これも普段の運動不足の賜物かな。
ってのんきに考えてる場合じゃなかった。子猫を抱えて早く移動しないと車にひかれる。
と、そのとき左耳をものすごい音が貫いた。この音は車のクラクションだ。
俺が左を向くと、トラックが俺に迫っていた。
ああ、もう無理だ。避けられない。
俺、死ぬのかな。向こうはトラックだし…。でも、運よければ助かるかも……なんて無理か。
やけに時間が経つのが遅い。気付けば周りすべてがスローモーションだ。
トラックも、こちらを見ている通行人もすべて。だが、動こうとしても俺の体は動かなかった。
唯一動く顔を、子猫へと向けた。
なんでかしらないけど、呼ばれた気がしたから。
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