91人が本棚に入れています
本棚に追加
【視点切替】
翼にこびりついた血を払う。
やはり人間は貧弱だと痛感した。
背後で物を言わぬ屍となった肉を眺めて。
「哀れ…」
一言に過ぎない。
弱いからこそ人は群れを成し、身を守り合う。だがしかしそれを自身の力と過信し、集団心理に身を任せた結果。
容易く脆く簡単に絶命。
強き猛者を求め大陸を超え、この島国に降り立ったが、やはり此処にも居ないようだ。
私の後継者となるべくして生きる者は…。
「どこだ…」
ボロく寂れたこの建物を歩む。
期待はして居ないが、しかし姿を見られたからには死んで貰う。
私の計画が狂わぬ内に、不安の材料は消して置かねばな。
そう考えつきながら歩くも、とうとう屋上まで来てしまった。
扉に手を掛け、開いた瞬間。
後頭部に、骨の軋む音と共に、強烈な痛みが発生した。
視界が光を放つが如くパチパチとする。
もう一撃。
今度は床に倒れ込んでしまった。
「ぐっ…!?」
それから容赦ない打撲の連打。
立ち上がる隙も与えない無慈悲な攻撃。
眩む視界の中、攻撃の方向に研ぎ澄まされた爪を突き刺す。
「ぐはっ!!」
呻き声と共に攻撃は、止まった。
そして定かでは無い視界で攻撃の犯人を覗いた。
最初のコメントを投稿しよう!