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容赦なく燃え広がる戦火。
崩れ落ちる建造物。
焼ける人の匂い。
叫び声に似た悲鳴。
この国は終焉を迎えようとしていた。
自分たちが、今まで神と信じてきた存在によって。
空から舞い降りる白き翼の異形な神の申し子。
割れた大地から朽ち果てた死人。
荒れ狂う海原からは轟く三首の大蛇。
それらの化け物により多くの死傷者が出た。老若男女問わず皆平等に死を与えられた。
神の怒りを人々に静められる訳がない。
人々は全てを諦め、何をすれば良いのかも分からずただ逃げ出すのみ。
そんな逃げ惑う人々を背に、一人の男は歩む。
そして恋い焦がれた異性の名を呼ぶかの如く言葉を発した。
「会いたかったぜ…カミサマ」
人々を蹂躙していた化け物たちは男に気がつくと、すぐさま飛びかかるように向かってくる。
「邪魔くさい」
男はさも、布を切り裂くかの如く目の前の死人を蹴散らす。
「もう一回眠っとけ」
何事も無かったように。
歩む。
歩む。
そしてその先の存在を睨む。
眩い程の光を放つ十二人の人の形をした神々を。
「久しぶりだな」
そう言うと、自身の身の丈以上の大剣を軽々と構える。
「そんじゃサヨナラ」
光の波動を体に受けながらも前に進み、力強く強襲をかける。
神と一人の人間の戦争の火蓋がきって落とされた―――
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