プロローグ

2/2
前へ
/105ページ
次へ
容赦なく燃え広がる戦火。 崩れ落ちる建造物。 焼ける人の匂い。 叫び声に似た悲鳴。 この国は終焉を迎えようとしていた。 自分たちが、今まで神と信じてきた存在によって。 空から舞い降りる白き翼の異形な神の申し子。 割れた大地から朽ち果てた死人。 荒れ狂う海原からは轟く三首の大蛇。 それらの化け物により多くの死傷者が出た。老若男女問わず皆平等に死を与えられた。 神の怒りを人々に静められる訳がない。 人々は全てを諦め、何をすれば良いのかも分からずただ逃げ出すのみ。 そんな逃げ惑う人々を背に、一人の男は歩む。 そして恋い焦がれた異性の名を呼ぶかの如く言葉を発した。 「会いたかったぜ…カミサマ」 人々を蹂躙していた化け物たちは男に気がつくと、すぐさま飛びかかるように向かってくる。 「邪魔くさい」 男はさも、布を切り裂くかの如く目の前の死人を蹴散らす。 「もう一回眠っとけ」 何事も無かったように。 歩む。 歩む。 そしてその先の存在を睨む。 眩い程の光を放つ十二人の人の形をした神々を。 「久しぶりだな」 そう言うと、自身の身の丈以上の大剣を軽々と構える。 「そんじゃサヨナラ」 光の波動を体に受けながらも前に進み、力強く強襲をかける。 神と一人の人間の戦争の火蓋がきって落とされた―――
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

91人が本棚に入れています
本棚に追加