裏側の『嗅覚』

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会長がどこでコイツを見つけてきたのかは、ほぼ傍にいる俺ですらわからない。 だが、近くに侍らせるようになったのがアイの消えた次の日からなのは覚えている。 そしてとうとう煩いだけのコイツのどこがいいのか、会長は二日前程から生徒会室に寄り付かなくなった。 朝や放課後の生徒会業務が滞れば後々の行事に影響すると知っているはずなのに、目の前の会長は煩いアレの背を悠々と見送り、授業に遅れる事すらいとわず教室に向け歩きだす。 ……俺はその後ろを感情や考えを殺しついていく。 家からの言い付けと言えば甘く聞こえるかも知れないが、自分を盾にしてでも守れだなんて馬鹿げた話を律儀に従っている俺も馬鹿げている。 守る価値なんてコイツにあると思えないのにな。 歩きながら生徒会室だろう場所に目を向ける。 いつもなら今頃あの場から教室に向かっていたのにと。 教室につけば耳をつんざく喚声に飲まれる。 毎朝、本当にいい加減にして欲しいと思いながら、薄く笑み挨拶する志鶴の横を通りすぎる会長に続く。 「……慎も、おはようございます」 「あぁ、おはよう」
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