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ぞくぞくっ、と来たのか両手で自分の二の腕付近を掴んでいる。
「さ、ささささ笹本君!?」
「僕の名前は、笹倉だよ?」
どこまでテンパっているのだろうか。その慌て具合が面白くて、可愛くて……もっと弄りたくなる。
「あっ、えと……その……」
先ほど教室での変態っぷりはなりを潜め、今はただの僕にとっての可愛い女の子だ。
あわあわと忙しなく動く視線。僕の方を見て、目があったと思うとすぐさま、明後日の方向を向いてしまう。
「折田さん、落ち着いて。ほら、深呼吸して」
折田さんは僕の言うとおり、胸に手を当て深く息を吸い、ゆっくりと吐き出す。
「落ち着いたかい?」
「(て、天使(笹倉君)がこんな不細工な私に笑顔で話しかけてるぅぅ!?)」
「…………?」
僕は返事のない折田さんに首をかしげる。
ゴクッ、と折田さんが生唾を呑み込む音がした。
「じゃあ、僕は帰るね」
僕がそう言って立ち上がると、折田さんは「え?」と言う顔になった。
ばいばい、と言って保健室から立ち去る。ベッドの上には呆然とした折田さんがいた。
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