闇と炎と悪意と

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 こんな時だというのに、若き主のその優しい心根に三人は嬉しく思う。  「では、私が先に入りますから続いて中に入って下さいませ」  有悠がさっと前に出る。おきくはその言葉に逡巡したものの、早くせねばならない事態であることを理解して、頷いた。  「我と有悠で中に入る。朽葉と卯月は周囲を見回り、異変が無いか確認せよ。火付けの者がいたら、生け捕りに」  左右の二人に指示を出すと、手巾(ハンカチ)で鼻と口を覆い頭を低くして、有悠の後から蔵の中へ飛び込んだ。有悠もおきくと同じ格好で更に懐中電灯を持っている。  蔵の中は、灯りが有っても暗い事は最終修行試験で経験済みだった。それゆえに、蔵に異変が有った事を知った時、懐中電灯を所持した。
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