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「なに略してんだ。いや、完全体の方のザビエルでも嫌だけどさ。で、神永。お前をここに読んだ理由だが……分かってるか?」
「知らん。」
「……だよな。まぁ、あれだ。お前こないだ夏風高校の生徒に本気のエルボーくらわせたろ。あれでその生徒さん全治二週間の怪我負いました。親御さん激怒してます。はい、どうします?」
「あー、そのことか。いや、それはそいつがお婆さんの荷物を盗もうとしてて……」
「夏風の生徒はお婆さんの荷物を運ぶのを手伝おうとしてただけだ。はぁ……もうお前退学でいいか?」
「……っ!!いや退学だけは勘弁して頂けると……。」
「うん、まぁ、お前も悪気はなかったみたいだし。今回の件は俺の方でどうにかしとこう。分かったら今後気をつけるように、以上。ほらさっさと帰れ。」
「えっ、何でそんなあっさりと……でも許してくれんならいいや。そいじゃさよならザビエル!」
「ザビエルじゃねえアルシンドスタイルだ。ってもう行っちまったか。」
須藤はコーヒーを入れようと思い立ち上がった。腹に溜まった贅肉が若干鬱陶しい。
コーヒーを作りながら須藤は今回の事件の一連の流れを振り返った。
流石に他校の生徒に重傷を負わせた時には神永終わったな、と思った。が、それは甘かった。
やつの友人の波瀬 宏太。あいつが人脈を駆使して事件を隠滅してしまった。よく分からないが凄い。
さらに同じく神永の友人の五十嵐 涼がそのルックスを駆使して親御さんを誘惑することで怒りを鎮めた。これまた凄い。
まさに完全犯罪。俺も神永に何かすれば社会的に抹殺されたりしかねん。だから今回の件は不問にする。一応怒るポーズはとるけどね。
なんていう舞台裏があったことをおそらく神永は知らないのだろうなぁ、と須藤は思いながら不味いインスタントコーヒーを啜った。
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