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オレンジ色に染まる教室。
校庭から響いてくる運動部の声。
僕、庚葵(カノエ アオイ)は一人自席に座って外の景色を呆然と見ていた。
これと言ってやることはない。
部活をやってはいない為、帰宅することは可能だ。
けど、今日は何だか動きたくなかった。
友人のほとんどは部活動中で、同じ帰宅部の友人は先に帰ってしまっている。
別に置いてかれた訳ではない。
僕自ら、ここに留まるを選んだのだ。
「はぁー暇だな」
こんな事を言っているなら帰れと言われるだろう。
その言い分について僕も賛成だ。
けど、動きたくないんだ。
頬をぴったりと机につける。
ひんやりとした感触が心地良い。
ゆっくりと瞼を閉じた瞬間、
「おい! 待てよ!」
「早く、そうしないと――」
廊下のほうから声が二つ。
声色からして男だろう。
先生が見回る時間にしてはまだ早い。
多分、生徒だ。
こんな時間に来るなんて忘れ物かな?
忘れ物なら別に動く必要もないと思いそのままでいようとした矢先、
「――あの場所に人は来ない」
「……で、でも……」
「大丈夫だ。俺の事が信じられないのか?」
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