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「なに、やってるんでしょうねぇお互い。」
倉沢さんが自分のカップに口を付けてまた笑った。
その笑みはとても自然で、わたしも思わずつられて笑ってしまう。
「ですね。」
と、同意をしながら。
肩の力を抜いて喋れば、なんてことはない・・・のか?
わたしがそう思い始めてきた頃、姿勢を正したりとか、咳払いをしたりとか、改まった体勢になった倉沢さん。
そして
「よかった。
佐藤さんに報告する前で。」
と言い始めた。
「え?」
「うまく、いかなかったと報告する前でよかったと。
・・・いや、佐藤さんに義理立てして、ということでは決してなくて。
わたし達、また、会いませんか?
このご縁を、大事にしてみませんか?」
ドキッと胸が鳴った。
けど嫌ではなくて。
眼を、そらしたりもしなかった。
「はい。」
わたしが彼に返したのはその一言。
でも、今のわたし達にはそれで十分だったような気がした。
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