未来はいつも決まっていて、それでいて終わっている

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 はっきり言って面倒だ。自分の非をありもしない出来事を捏造して言い訳することより面倒だ。しかしこれも全ては彼女を作るために必要な過程。  相手は多分文中さんほどの美人ではないだろうが、彼女を作るための努力は惜しまない。俺は全身が強張るのを感じながら口を―― 「おーい、未潮ー」   「……」  自分の行動が他人の誰かによって遮られる。この数年間でこんな展開が何度あっただろうか。俺は覚えていない。 「あ、あすい。おはよう」 「よーおはよー……と、そちらの先輩もチース」 「ち、チース……」  俺たちに向かって駆け寄ってきた、いかにも運動が出来そうな雰囲気を醸し出しているこの女子はどうやらあすいさんというらしい。  らしいって言ってることから察しはつくと思うが、俺とあすいさんとやらは完全初対面である。今初めて出会った。にも関わらずこの軽ーい態度。  良く言えばフレンドリー、悪く言えば馴れ馴れしい。しかし残念ながら俺は後者での捉え方しか出来ない人間なので、あすいさんに対する俺の印象はあまり関わりたくないレベルの人まで下がってしまった。  だが髪型はセミロングと俺の好みの的を射ている。この点を考慮すると……あれ、中々いい感じじゃないか?  ……。第一印象というものは態度も大事だが見た目も大事。これを覚えておこう。 「こんな朝っぱらからどうしたんだ?」 「いーやあたしも未潮と……そこの先輩と同じ理由」  あすいさんは文中さんの隣に突っ立っている俺が手に提げているビニール袋に目を向けそう言う。 「そういう未潮はどうしたの?」 「いやちょっと偶然同じ寮の先輩とここで会って、立ち話……じゃなかった相談をしていたんだ」  はたしてあれは偶然の出会いと呼べるのだろうか。俺にはどう考えても自分がコンビニから出てくるのを待ち伏せていたようにしか思えないんだが。 「相談?」 「そうなんだ、実は……」  かくかくしかじか。文中さんは簡潔に今の自分の状況をあすいさんに伝えた。  ……というかこの会話、この場所に俺いる必要ないよな? 自室は無理にしてもせめてコンビニの中で涼みたいぜ。      「ふーん、先輩にアドバイスをねぇ……」  その時、文中さんの話を聞いて大体の事情を把握したと思われるあすいさんが訝しむように俺を見てきた。  おいこら、勝手に他人の価値を値踏みするな。
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