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「僕は恋なんて馬鹿馬鹿しいことはしない」
「は?」
俺の隣の席に座っていて、ふとそんなことを呟いたそいつの名前は加藤。去年、今も俺たちの通っているここ伊佐学園に転校してきた男だ。
ってまあ紹介はどうでもいいとして。
そんな加藤が何故今、授業中であるこのタイミングでそんなことを言ってきたのか気になった俺は率直に訊く事にした。
思ったことはすぐに訊かないと忘れちゃうからね。疑問に思ったことはすぐにでも訊くべきだと俺は思う。
「急に何よ」
「?」
「いやなぜそんなこと言ったのかなと」
「いや恋なんてどこぞのラノベヒロインが言っていたが一種の病気だ。それも直らない」
いきなり話の論点から逸れた気がしたけどまあ別に気にしない。
俺は適当に相槌をうって加藤の話に耳を傾ける。
「そうだね」
むしろ直らないから恋じゃないの?
俺はそう思ったんだけど口には出さず、加藤の言葉の続きを待った。
「しかもだ、その恋にかかると日常生活に支障をきたすそうじゃないか」
「……まあ個人差はあると思うけど」
恋なんて小学三年生の時以来したことが無いのでよくは知らないけどさ。
何の自慢にもならないことを考えている俺を放って、加藤は表情を変えることなく、淡々と思っていることを言葉に変えていく。
「で、最初の話に戻るがなぜ今そんな話をするかだったな」
「うん。だいぶ脱線して取り返しのつかないことになりそうだったけどそうだね」
「――告られたのさ」
これまた唐突に加藤はそう言った。
「……そうか」
加藤がここに転入してから一年と少し。
ついにこいつにも春が来たか。
……いや春といっても今は季節は夏だし、肝心の俺にはまだ春の訪れはないんだけどね。羨ましい。
まあ恋人ができないことに関してはもう諦めたけど。
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