1部「後輩」

2/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
自分は間違っていない、はずだった。 「自分の信念をつらぬく」 とは聞こえが良いもので、言い換えれば「頑固者」。 自分でもしていることは古風で、要らぬ努力なのかもしれないことも知っていた。 一世一代の大勝負、とまではいかないが、一連のことを先生に相談するのは、大きな決心が必要だったわけで。 つまりそれが、俗に言う「チクる」ことになるんだろう、なんてのほほんと夜を過ごしていた。 チクる人間は好きじゃないし、必要ないことまで言うな、と怒鳴りたくもなるが、そこはこらえて。 ことの発端は、内田と石原の態度だった。 部活動の後輩で、何もしなければ、大切にしてやんなきゃいけない後輩だったのかもしれないが、彼女らの態度は、自分が馬鹿にされているようで不快だった。 でも、こっちは十数年も生きているし、先輩なのだから、こっちが我慢しよう、なんて考えていた。 だから、自分が馬鹿にされても、笑みを浮かべながら、「そんなことないよ」とおどけて見せていた。 それが一変したのは、雪が溶けかかる弥生下旬のことだった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!