有木直也の登場

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「お前…震えてるぞ! 大丈夫か!?」 凌は舞香を心配する。 今の舞香は普段では考えられないほど弱々しかった。 「…っ!」 一方、舞香は凌の声で我に返る。 心配そうに自分を見つめる凌。 舞香は耐えきれず目をそらす。 そして、震える自分の体をぎゅっと抱き締める。 ーお願い、止まって… 「舞香、やっと会えたね。 会いたかったよ。」 直也はふわっと笑う。 今までの人を脅すような笑顔とはちがい、優しく穏やかな笑顔だった。 「……たくない。」 「え?」 「私は会いたくなかった! 何で、何のために会いに来たの!」 舞香は叫ぶ。 こんな状況では冷静にはなれない。 震える体を抱き締めながら 舞香は直也を睨み付ける。 「どうして? どうして会いたくないの? 僕はこんなに君に焦がれていたと言うのに。」 わからない、と直也は首をかしげる。 「…もうやめてよ。」 舞香は今にも崩れ落ちそうだった。 ー直也はあのときとなにも変わってない。 怖い、本当に怖い、 「舞香、君は何を言って… 君は…君は僕のお姫様でしょ?」 《 お姫様 》 その言葉を聞いた瞬間 再びあの日の記憶がフラッシュバックする。 ――――――― 『僕のお姫様だぁ…! 返して、僕のお姫様返せ!』 『あいつは…悪いやつじゃないんだ』 『何で刺したんだよ!』 『死んじゃやだ!やだよ!』 ―――――――――― あの日から何度も夢で見た。 見る度に 何度も何度も後悔した。 何度も何度も泣いた。
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