有木直也の登場

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「…とりあえず中入ろっか」 瑛が言うと春輝も動きはじめる。 そのままふたりは中へ入っていった。 「俺たちも入るか。」 凌は舞香を連れていこうとする。 しかし、舞香の足は動かない。 「舞香どうした…?」 凌の問いかけに舞香は答えない。 ただただ立ち竦んでいる。 「舞香は…あいつと知り合いだったのか?」 舞香は頷く。 「何であんなに震えてたんだよ?」 舞香に問い掛ける凌の声はとても優しい。 つい、話してしまいそうになる。 ーでも…嫌われたくない 失いたくない… 「…まだ、言えない…かな…」 そんな舞香の答えに 凌は、そっか、と言って舞香の頭を優しく撫でる。 「ひとつだけ…何であいつと知り合いなのか、知りたい。」 凌は不安だった。 今までこんなにも弱々しい舞香を見たことがなかったからだ。 ーお前が族とかヤンキー嫌いなの あいつのせいなんじゃないか? 直也と舞香はただの知り合いだとは思えない。 絶対ふたりの間には何かある。 ー俺はお前の過去が知りたい。 だが今の舞香に聞いても 答えてくれないのはわかりきっている。 ーまだ、俺たちはダメなのか… まだ、お前の本当の居場所にはなれないのか 凌は自分の力のなさに苛立つ。 ーどうしたら… 「………私が中学の時直也と出会ったの」 ー!!! 凌は舞香が話始めたことに驚く。 そして、舞香が今にも泣き出しそうなことに気付き肩に回す手に力をいれる。 「…ゆっくりでいいから」 舞香は頷くと、 深呼吸をして再び話始める。
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